こころの相談室 最終回

富山県で臨床心理士(こころの専門家)をしている深澤です。
私自身が思春期のとき、学校のこと、人間関係のこと、恋愛のこと、家族のことなど、
悩んだ経験が大人になってから役に立っていることがたくさんあります。
悩むことは人間を成長させる力を持っています。
臨床心理士として「こころ」の視点から、皆さんの悩みごとについて、回答しようと思います。

恋人に合わせてしまう

Q 恋人と喧嘩したわけではないのですが、価値観のズレに気づいてしまいました。
彼に言わなきゃいけないと思いながら言えず、彼に合わせてしまう自分がいます。
彼は思いをとても伝えてくれるのですが、わたしは積極的に来られることが少し苦手です。
これを伝えると傷つけてしまいそうなのが怖いです。どのように伝えればよいのですか?

相手を責める言い方はNG

傷つくとか、傷つけられるという思春期の繊細な葛藤が質問者の中で起きているのだろうなぁと思いました。
そして、それは思春期ということだけでは片づけれられない質問者の大切な「こころ」も大きくかかわってくるのだと思います。

良好な恋愛関係や、良好な人間関係を構築するためには、お互いが相手を尊重し、そして自分自身のことも大切にすることです。
相手のことばかり尊重して、自分のことを大事にしないと相手との関係がつらくなっていきます。そのうえで、伝え方を工夫するとよいと思います。

相手に伝えにくいことをいう時には、相手を責める言い方はNGです。伝えられた方は、自分が攻撃されているように感じるので、嫌な感情だけが心の中に残ってしまい、こちらの言いたいことが伝わりにくくなります。

2つの話し方を紹介します。
①You(ユウ)メッセージ
あなた(You)を主語にしたコミュニケーションです。
例えば、「(あなた)そうやって、積極的に来られるの嫌なんだけど、やめてよ」
主語は「あなた」とは言いませんが、「あなた」という文脈が入っています。
これでは、相手を責めた言い方になりやすくなってしまいます。

②I(アイ)メッセージ
私(I)を主語にしたコミュニケーションです。
例えば、「私(I)は積極的に来られるのが少し苦手なの。(そして、私(I)はあなたを傷つけてしまいそうで怖い気持ちもあるの)。」
このように、主語を私(I)にすると、相手への伝わり方が柔らかくなり、こちらが本当に伝えたいことが相手に伝わりやすくなります。
そうすると、このあとに続くお互いの気持ちや考えについてのコミュニケーションが実りのあるものになっていきます。

自分の気持ちを伝えるときの工夫として参考にしてみてください。

1年間ありがとうございました!

一年間、私のコラムを読んでくれた皆さん、ありがとうございました。今回で「こころの相談室」は終わりです。
12個の質問を読ませていただいて、現代社会を生きているみなさんの悩みは、私が高校生のときの悩みとは違うものもあるけれど、似ているものがたくさんありました。
高校生のときに多くの人が通る課題や悩みは、年月が経っても共通している部分があるのだなぁと感じました。
みなさんの学校にはスクールカウンセラーがいます。みなさんの日常生活での悩みごとについて、お話を聴いてくれます。
その悩みごとをどのようにしていけばよいか一緒に考えてくれます。ぜひ、そのような専門家を頼ってみてください。
スクールカウンセラーという人が居なかったり、滅多に勤務しないので会えなかったり、自分の学校のスクールカウンセラーは少し話しにくいとうこともあるでしょう。
そのようなときは、公的な相談機関がたくさんあります。インターネットで調べてみてください。

最後に臨床心理士という仕事は「こころの専門家」です。「臨床心理士という人がいるらしい」ということを知っておいてください。
何かのときに役に立つはずです。また、何らかの形でみなさんとお会いできることを楽しみにしています。

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深澤 大地

富山県こどもこころの相談室 代表(臨床心理士)

長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設。
現在は、子どもに限定せずに未就学児~成人のカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。