世界に飛び出す。
バレエダンサー 武岡昂之介さん
武岡昂之介さん(20)=富山市出身=は
世界的振付家の故モーリス・ベジャールが創設したバレエ団
「ベジャール・バレエ・ローザンヌ」(スイス)に所属するバレエダンサー。
バレエファンなら誰もが知るバレエ団で、言葉通り世界を舞台に活躍している。
日本を飛び出し、世界で踊るやりがいを聞いた。
超一流のダンサーたちに刺激
Q 昨年8月からスイス・ローザンヌで暮らしていますね。どんな生活なんですか。
早速日本が恋しいです(笑)。今年成人式だったんですけど、帰れませんでした。
往復で合わせて24時間は取られるし、飛行機代も高騰していますしね。
夏にはなんとか帰ろうと思っていますけど。
今はオランダのバレエ学校時代に知り合った友達家族の家にホームステイみたいな形で住まわせてもらっています。
慣れないスイス生活の中で、とても助けられています。でも、そろそろ一人暮らしするのもいいかもしれません。
Q お休みの日はどう過ごしているんですか。
僕は基本的に週休1日で、日曜日だけがお休みです。でも、日曜日のスイスはお店がほとんど閉まっているんです。
スーパーもやっていない。なので、やることが何もない(笑)。下手な田舎以上に行くところがどこにもない。
1日中本を読んだり、ゴロゴロしながらゲームをしたり。友達の家に行ったりして過ごしています。
Q これまでもバレエ教室の公演や、コンクールでステージに立ってきたけれど、
プロのステージとは重みが違いますか。
全く違いますね。プロとしてやっているわけだから責任を感じます。
お客さんにどれだけ多くのことを届けられるのか、すごく考えています。
ありがたいことにソロパートもある大きな役を演じる機会をたくさん頂いています。
それに応えないといけないプレッシャーがありますが、何とかやれているようです。
Q 世界各地で公演しているんですね。
最初の舞台がイタリアで、その次にスペイン、次はベルギーかな。もちろんスイスでもたくさんやっているんですけど。
各国で反応が違って面白いです。どこも温かく迎えてくれるし、出待ちの方もいるんですけど、特にスペインは熱狂的です。
拍手も歓声も大きい。お客さんの反応が一番のやりがいですね。それが全て。
最後にお辞儀をして、拍手をもらっている瞬間が一番うれしい。
でも、自分でも不思議なのですが、上手にやれた時より、思ったようにやれなかった時の方が大きな歓声をもらえたりするんですよね。
Q 有名なバレエ団に所属して良かったことは。
短い期間ですけど、圧倒的に成長できたと思います。メンタルでも、技術でも、フィジカルでも。
もちろんまだまだなんですけど、それでも入る前と今とでは全然違います。
超一流の人たちがすぐそばで踊っているんだから、それを見ているだけでも刺激になります。
世界の大きなところでやる意味は、こういった環境にあると思います。こんなに贅沢なことはない。
同じようにバレエをやっていた人でも世界の舞台に立てるわけではない。
Q ご自身の現状についてどう思うか。
いろいろなコンクールで賞はもらってきたけれど、自分ではそんなに上手じゃないと思っていました。
僕よりうまい人たちはたくさんいました。でも、プロでやっている人はひと握り。
十分な実力を持っていないといけない上に、どこかでラッキーが必要なんですよ。
いろいろなバレエ団が毎年オーディションをやっているけれど、それぞれどんな人を取りたいかは違う。
必ずしも技術だけが全てではない。ただ、この後ちゃんとやれるかはまた別問題です。
Q バレエで世界の舞台に立とうとはいつ頃から思っていたんですか。
中学生の時にはもう決意していたと思います。でも、軽く見ていたところもあります。
どこかのカンパニーには入れるんだろうなって。でも、実際には簡単ではなかったですよ。
バレエ学校時代には、校内のオーディションに落ちたりしていましたから。
でも、その時の悔しさでめちゃくちゃ頑張ったことは今につながっていると思います。
人生で一番練習しました。あの努力があるから今がある。
Q 高校生にメッセージを。
僕はちゃんと高校生活を送ったり、受験勉強したりしている人を尊敬しています。
僕は中学を卒業してからは、海外でバレエばっかりやっている。
僕がしてこなかったことをやっている皆さんをすごいと思うし、うらやましいです。
だから偉そうなことは言えないですよ。ただ、やりたいことがあるならやった方がいいですよね。
そこから見えてくることもある。
僕もバレエが一回嫌になって、サッカーや野球とかいろいろやったんですけど、結局はバレエだなって思った。
ちょっとでもいいなって思ったら、飛びついてみるといいですよ。
Q 日本で公演することはあるんですか。
うちのカンパニーは隔年で日本公演をしているので、もしかしたら2024年には日本でやれるかも。
目標にしていたことなので、いい役で出たい。これまでお世話になった人たちに、成長した部分を見てもらいたい。
ちゃんと頑張っているんだなって思ってもらえたらうれしいです。
武岡昂之介
バレエダンサー
たけおか・こうのすけ/2002年富山市生まれ。
3歳から母の武岡ともさんが主宰するフェアリーバレエシアターでバレエ人生をスタート。2018年の中学校卒業後、オランダ国立バレエ学校で学ぶ。昨年から世界的振付家のモーリス・ベジャールが創設したバレエ団「ベジャール・バレエ・ローザンヌ」で活躍する。
※掲載内容とプロフィール情報は
Future2023進学・オシゴト版(2023.3.3)時点のものです。