こころの相談室VOL.3
Q 我が家ではご飯を食べるときに、テレビのニュース番組が流れます。
でも、戦争や事故の悲惨なニュースばかり流れてきてつらいです。
受験に役立つこともあるだろうし、為になることもあるのですが、悲しくなります。
ニュース見ない方がいいですか。
情報を選び「共感疲労」解消
私もとても共感するご質問です。
私は子どもの頃からテレビっ子で、毎日、何時間もテレビを観る生活を送っていました。
しかし、コロナ禍になって、ほとんどテレビを観なくなりました。
理由は、日々、新型コロナウイルスの危険性の話題、感染者の人数、ワクチンの副作用等、
観ていてつらい気持ちになるからです。
また、ロシアとウクライナの戦争が始まり、残酷さを連想させるニュースが多くなりました。
さらに、自然災害や事故などのニュースも日々見聞きをする状況です。
これによって、私は、週にトータルで30分程度しかテレビを観なくなりました。
直接、自分のことでは無いけれど、他者の気持ちや状況を想像してこころがつらくなることを
心理学では「共感疲労」と呼びます。
人の気持ちを推測したり、相手の立場で考えたりできる人は「共感能力」が高いと言われます。
これは、対人関係を円滑にするために大切な能力の一つです。
一方で、この能力が高すぎると、他者に気を遣いすぎたり、
他者のつらさを自分のことのように感じすぎてしまったりことがあります。
これによって、自分のこころがつらくなるのです。
「共感疲労」によってあらわれてくる症状の代表的なものとして、
・イライラしやすくなる
・理由もないのに悲しくなる
・眠れない
・食欲が無い
・無気力になる
・物事に集中できない
・身体がだるい
などがあります。
このようなことにならないための対処として、「ニュースを観るか、観ないか」という
0-100(ゼロヒャク)思考ではなくて、情報をコントロールして取り入れることが大切です。
例えば、
・ニュースは○○テレビ局の〇〇時からのニュースしか観ない。
・ニュースは新聞やネットから情報を得る。
・つらいニュースを観たときは、感じたことを、家族に話してつらい気持ちを和らげる。
などです。
ちなみに、私は、この三つの方法をすべて取り入れています。
それによって、テレビを観る時間が大きく減り、減った時間をプライベートにたくさん使えるようになりました。
また、テレビっ子だった私でも、「テレビが無くても生活することができるのだ」と
新たな一面を発見しました。これは私にとって、非常に嬉しいことです。
このように考えると、この「共感疲労」について考えることで、
自分の新しい生活や、新しい面に気がつくきっかけになるかもしれません。
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深澤 大地
富山県こどもこころの相談室 代表(臨床心理士)
長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設。
現在は、子どもに限定せずに未就学児~成人のカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。