こころの相談室VOL.9

富山県で臨床心理士(こころの専門家)をしている深澤です。
futureの質問コーナーの回答をしています。
私自身が思春期のとき、学校のこと、人間関係のこと、恋愛のこと、家族のことなど、悩んだ経験が大人になってから役に立っていることがたくさんあります。悩むことは人間を成長させる力を持っています。臨床心理士として「こころ」の視点から、皆さんの悩みごとについて、回答しようと思います。

お金使いの荒さをどうにかしたい

Q あれもこれもと欲しいものがあります。バイトもしていますが、それでは足りません。
我慢したいと思うのですが、買えるものから買ってしまいます。
お金使いの荒さをどうにかしたいのですが、どうしたらいいですか。

アプリでお金の出入りを記録しよう

欲しいものがあって、それを自分でバイトをして賄おうとしていることが素敵だなぁと思いました。
たくさんの10代とかかわることがありますが、家族からの援助だけで欲しい物を購入している人もいるからです。
私が最初に思ったことは、どのような物を、どのようなタイミングで欲しくなるのだろうかということです。
それによっても回答に違いが出るかなぁと思ったりもします。

私も学生のころ、欲しいものが我慢できずに、たくさんの買い物をしました。
そして、後日、冷静になったときに「どうして、あれにお金を使ったのだろう」と落ち込むこともありました。
私が高校生の相談を聴くなかで、お話する対処方法についてお話したいと思います。
まず、お金の出し入れをきちんと記録しておくことです(私は、お小遣い帳替わりにスマホにアプリ入れて、毎日記録しています。
お風呂に入ったあとや、寝る前というように記録する時間を決めておくと、記録することを忘れにくくなり、結果として続きやすくなります)。
記録することのメリットは、お金をいくら使って、お金がいくら入ってくるかという現状を客観的に把握することができることです。

この「記録をしておく」ということは、お金の管理以外にも役に立ちます。

例えば
「イライラすることがあったときに、どのようなことでイライラしたか」ということを記録しておくと、
自分がイライラしやすい出来事が分かるようになっていきます。
「やる気が起きるときはどんなときで、やる気が起きないときはどんなときか」ということを記録しておくと、
自分はどんなときにやる気が起こりやすいのかということが分かるようになっていきます。
記録によって、悩んだときの対処がしやすくなります。記録をするということは、自分を理解するうえで大切です。

さて、お金の話に戻ります。
①1か月間、記録を付けてみてください(記録を振り返ると、買わなくてもよかった物が出てくるでしょう)。
②1か月間で使った総額から、買わなくてもよかった物の金額を引いていくと、本当に必要なものを買った合計金額が算出されます。
③算出された金額を、月々に使える金額に設定します。
④それ以上の金額は、手元に無いような状況にします(親に預ける、通帳に入れておく等)。
*どうしても、設定金額以上の物が欲しい月は家族に交渉する方法もあるでしょう。

上手くいくこともあるし、上手くいかないこともあるでしょう。
大切なことは上手くいかなくても、「どうして上手くいかなかったのか」ということを記録から分析して、
目標を修正し、翌月にまたチャレンジしてみるということです。
一度やってみて、上手くいかなかったからといって、そこで止めないということです。

最後にひとつ。臨床心理士の仕事をしていると、物欲が強すぎて借金をしてしまう人たちに出会います。「買い物依存症」と呼ばれます。
このことで苦しんでいる人たちとかかわるときに、私が感じることは
「物が欲しいという気持ちの奥底には、自分の満たされない気持ちを物で埋めようとしている」場合も多いということです。

「あなたにとって物欲は、どのような意味があるのか」ということについて、
考えてみることも自分のことを知るためのきっかけになるかもしれません。

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深澤 大地

富山県こどもこころの相談室 代表(臨床心理士)

長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設。
現在は、子どもに限定せずに未就学児~成人のカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。