こころの相談室VOL.10

富山県で臨床心理士(こころの専門家)をしている深澤です。
私自身が思春期のとき、学校のこと、人間関係のこと、恋愛のこと、家族のことなど、
悩んだ経験が大人になってから役に立っていることがたくさんあります。
悩むことは人間を成長させる力を持っています。
臨床心理士として「こころ」の視点から、皆さんの悩みごとについて、回答しようと思います。

友人と比較してしまう

Q 私はよく自分と友人を比較しています。
彼女は勉強もできて、運動もできて、性格も良いのですが、自分はどうしてそうじゃないんだろうと悩んでしまいます。
自分に自信を持ちたくてもできません。
自分は自分と割り切ればいいのは分かっていますが、思ってもそう思えません。どうしたらいいですか。

あなたにできていることは何?

人間は無意識に他人との比較をしながら生きていきます。人との比較には2つあります。

① 下方比較
自分よりも劣っていると思う人を探し、「自分はこの人よりも優れている」と思うことで自分の気持ちを安定させることです。
しかし、毎回、自分よりも劣っている人を探しながら生きていくと、
自分が成長する可能性を小さくしてしますし、そのように考える自分を責めたりしてしまいます。

② 上方比較
自分よりも優れている思う人を探し、「自分もこの人のようになりたい」と思うことで行動のモチベーションを上げることに繋がります。
「勉強もできる人、運動もできる人、性格も良い人」と考えてみると、それがあなたの一つの目標になります。

ここで、大切なことをお話します。ポイントは、自分よりも少しだけ優れている人と比べるということです。
私は高校生の時、卓球部に所属していました。大会に出るとベスト16までには残ることができます。
しかし、圧倒的な強さの決勝戦を観戦していると「あぁ、何て自分は弱いんだろう・・・自分はオワコンだ」と落ち込んでしまいました。
しかし、自分よりも少しだけ実力がある人(例えば、ベスト16やベスト8)たちと比較した場合、
「この選手だったら、サーブを低めに打って3球目を相手のクロスに打てば勝てるかも」と思えるわけです。
そうすると、学校に戻ったあと、その練習を繰り返すためのモチベーションが上げることができます。
このように他者と比較することも大切ですが、他者との比較にこだわり過ぎることなく、過去の自分との比較も大切です。
「去年の自分よりも、今年の自分は〇〇ができるようになった」という感じです。
そうすると、自分の努力や能力をポジティブに捉えることもできます。

「隣の芝は青く見える」という言葉もありますが、自分よりも他者は優れて見えるものです。
客観的に考えて、相手があなたよりもすべてにおいて優れているはずはありません。
あなたには「できていること」や「やれていること」がたくさんあります。
そのことよりも、劣っている部分に注目しすぎてしまっているだけなのです。
私は、スクールカウンセラーとして高校で仕事をしています。高校生とカウンセリングをするとき、
相談者の高校生が「自分のできていると思うこと」や「自分がやれていると思うこと」を一緒に書き出すことがあります。
少し客観的に自分のことを振り返ることができます。

過去の相談はこちら

深澤 大地

富山県こどもこころの相談室 代表(臨床心理士)

長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設。
現在は、子どもに限定せずに未就学児~成人のカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。