こころの相談室VOL.8
futureの質問コーナーの回答をしています。
私は気にしすぎていますか
Q 友達と話したあと、「あの言い方だと私の気持ちが本当に伝わらなかったかもな」とか
「ああ言えば良かったな」といつも反省してしまいます。私は気にしすぎでしょうか?
また、気にしないようにするコツはありますか?
出来事は同じでも考え方次第で・・・
私は10代の頃、とても気にしすぎるところがあって、対人関係でとても悩んだことを覚えています。
そして、この悩みは子どもや大人を問わず、多くの人が悩んでいることです。
私は、臨床心理学を学び始めてから、このことについて10代の頃ほど悩まなくなった感じがしています。
臨床心理学を学ぶ中で、広い視点からこのことについて考えるようになったからです。
質問者の方に今よりも少し広い視点を持ってもらうため、2つのことをお話したいと思います。
①「気にしすぎる」というのは、思いつく最悪な状況を予測し、
もし、それが起こったときの自分へのダメージを最小限にしようとする大切な能力です。
なんせ、自分のこころのへの衝撃を自動的に守ってくれるのですから。
このことから、まず、「気にしすぎる」ということは悪いことではなくて、人間にとって自然な反応だということです。
一方で、気にしない(気にならない)人もいます。
なぜでしょうか?次のような考えがあります。
ある危機的な状況が起きたときに、みんなが同じ考え方や感じ方をしてしまうと1つの方向だけに向かって行動をしてしまいます。
もし、その方向に行くことが間違っていたとしたら、人類は滅びてしまします
(シマウマの群れがライオンの群れに襲われたとき、すべてのシマウマが同じ方向に逃げてしまって、
逃げた方向が高い崖だったとしたら・・・もうシマウマは滅びてしまいます)。
このように考えると、多様な考え方や感じ方をすることは人類が生存し続けるために重要だということが分かります。
しかし・・・
②現代社会において、気にしすぎということが強すぎると、生活に支障が出てくることがあります。
強いストレスがかかって病気になるかもしれません。
他者とのコミュニケーションが上手くいかなくなり、友達を失うかもしれません。
過去の変わらないことや、起きるか分からない将来のことを考えすぎると、
今やるべきこと(勉強や部活等)に集中できないかもしれません。
このとき、アルバート・エリスの「ABC理論」という考え方が役に立ちます。
これは「ある出来事が感情や行動を引き起こすのではなく、その人なりの物の見方や考え方が感情や行動を引き起こす」というものです。
・「相手に伝わらなかったかもしれない…」と考えると不安になるかもしれません。
・「何で分かってくれないんだ!」と考えるとイライラするかもしれません。
・「今日の話は相手にどんな風に伝わったかなぁ」と考えると「明日、どう思ったか聞いてみよう!」
とこの出来事を楽しめるかもしれません。
出来事は同じなのに、それをどのように考えるかによって結果(気持ちや行動)は変わってきます。
この2つのことを知り、質問者の視点が広がることで、悩みが少し軽くなるといいなぁと思っています。
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深澤 大地
富山県こどもこころの相談室 代表(臨床心理士)
長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設。
現在は、子どもに限定せずに未就学児~成人のカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。