こころの相談室VOL.7
富山県で臨床心理士(こころの専門家)をしている深澤です。
futureの質問コーナーの回答をしています。
私自身が思春期のとき、学校のこと、人間関係のこと、恋愛のこと、家族のことなど、
悩んだ経験が大人になってから役に立っていることがたくさんあります。
悩むことは人間を成長させる力を持っています。
臨床心理士として「こころ」の視点から、皆さんの悩みごとについて、回答しようと思います。
母さんの作る弁当が苦手です。
Q 母さんの作る弁当が苦手です。
申し訳ないのでちょっとは食べるんですが、ほとんど捨てています。
おなかはすくのでコンビニで買ったものでやり過ごしています。母の料理は彩りが苦手なんです。
母とは関係が悪くないので、傷つけたくないから言っていません。言わなくてもいいですよね。
誰かに相談し、お母さんとの関係をじっくり考えてみよう
いろいろなことを思い巡らせながら、何度も何度もこの質問を読みました。
私は臨床心理士という仕事をしているので、簡単に「こうしたらよい」ということは言いません。
なぜならば、この文章だけで、どうしたらよいか私も分からないし、あなたを混乱させたり、傷つけたりしたくないからです。
簡潔に回答すると
具体的に「〇〇なおかずが入っていると、恥ずかしくて食べにくいから、〇〇はお弁当に入れないので」
「〇色の食べ物が入っていると、美味しいお弁当なのに食欲が無くなってしまうから、〇色のおかずは入れないで」という言い方もあるでしょう。
おそらく、この回答では、あなたの悩みは解決しないと思いました。
そのうえで、いくつか私があなたに聞きたいなぁと思うことを書きます(これは、あなたが自分の考えを整理するために役立つと思うからです。そして、整理することができると、悩みごとは軽くなったり、気にならなくなったりすることも少なくないからです)。
・いつ頃からそのようなことがあったのだろう?
・何かきっかけのようなものはあったのだろうか?
・どのような彩りなのだろうか?
・母親ではない人の手作りの料理は食べることができるのだろうか?
・苦手だということは、食べられるときもあるのだろうか?
・食べられるときは、どうのようなお弁当なのだろうか?
・お弁当ではなく、朝食や、夕食であれば食べられるのだろうか?
・その彩りはあなたにとってどのような気持ちにさせたり、どのような考えを思う浮かべさせたりするものだろうか?
・お弁当を捨てるときはどのような気持ちになるのだろうか
(悲しくなるとか、寂しくなるとか、イライラするとか、スッキリするとか)?
などです。どうでしょうか。
もし、できるのならば、そのことを信頼できる人(友達、先生、スクールカウンセラー等)に話してみてもよいかもしれません。
話すことでより自分の考えが整理されるからです。
母親と「関係が悪くない」とか「普通」と答える中高生はたくさんいます。
しかし、「関係が悪くない」「普通」ということと、母親に対してネガティブな気持ち
(怒り、イライラ、憎しみ、不満、反抗したい気持ちなど)が無いということは違います。
これは「母親」と「友達」を置き換えても成立することです。
なぜならば、両方とも「人間関係」という点で同じだからです。
もしかすると、関係が悪くならないように、あなたが母親に気を遣っているかもしれません。
そうすると、「傷つくので言わなくてもいい」という問題より、
「なぜ、あなたが母親に気を遣ってしまうのか」という問題が正確な悩みになります。
そして、「言わなくてもいいですよね」ということは、どこかで「言わなければいけない」と思っているからでしょう。
それは、あなたが「母親との関係」について違和感があるこということなのではないでしょうか。
お弁当のことを母親に言ってもよいでしょう、言わなくてもよいでしょう、先送りにしてもよいでしょう。
それは、あなたが母親との関係をどのように考えるかだと思います。
回答のような回答でないような文章になりましたが、これが私の今できる回答です。
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深澤 大地
富山県こどもこころの相談室 代表(臨床心理士)
長野県生まれ。関東の公的機関で教育相談員やスクールカウンセラーとして勤務。平成21年に富山県総合教育センター客員研究主事として招聘。平成29年に子ども専門の心理相談室「富山県こどもこころの相談室」を開設。
現在は、子どもに限定せずに未就学児~成人のカウンセリングを行っている。また、講演会、新聞の連載エッセイの執筆、雑誌への記事の掲載、メディアへの出演など、臨床心理士として県内外で活躍中。