決めると選ぶのエトセトラ
自分で判断するって結構大変です。いろいろな情報を踏まえて考えなければいけないし、決めたからには後悔したくありません。
重要な事柄だったらなおさらです。「決める」「選ぶ」をキーワードに、Future 編集室が世の中のアレコレを調べてみました。
堤防を切るかどうか
「決」という漢字は、どのような成り立ちで生まれたのでしょうか。
代表的な説を紹介します。「氵」がありますから、水の流れに関わっている漢字だということが分かります。右側の「夬」は「えぐる」というイメージを示します。
この二つを組み合わせ、「決」は「堤防をえぐって切り、水を流す」ことを表しました。堤防は川や海の水が人々の暮らす地域へ入らないようにするのが役割です。
この堤防を切って水を流すのは、重大な判断を伴う行為ですね。
一歩間違えると、大惨事になりかねません。
だからこそ大事なことを「決める」という意味になりました。
決壊、決定、決行、決然、決別…。何だか重々しい雰囲気の言葉ばっかり?
やりたいこと?周りの勧め?
先輩たちはどのような理由で進学先を選んでいるのでしょうか。
マイナビが3月に全国の高校卒業予定者を対象に行った調査では、大学への進学者は「学びたい内容の授業があるから」と答えた生徒が6割近くを占めました。
短大と専門学校では「資格を取得するため」が最も高い割合でした。
やりたいことや将来を見据えて決めているのが分かりますね。
でも目標や動機をはっきり持てないケースもあります。
ベネッセ教育総合研究所の2013年の調査によると、特に就きたい職業や学びたい学問のない生徒では、周囲の勧めで志望大学を選ぶパターンが目立ちました。
先生や保護者が強い影響力を与えるそうです。
もしかすると、この結果が自分のことのように感じた読者も多いかもしれません。
決断・選択の裏側にある色彩
私たちは自分で決断・選択をしているつもりでも、実は誰かに行動を促されている場合があります。
その道具の一つが「カラー」です。色彩には、さまざまな効果があります。
例えば、Googleのテキストリンクの青色。
これはGoogleがビッグデータの印象を分析して発見した「利用者のクリック数を最大化できる最高の青色」だそうです。
確かに、内容に安心感を与えるような青色です。
導入以来、広告収入が一気に増えたとか。
また、引っ越し業者の段ボール箱に白色が多いのは、明るい色には心理的な重量感を減少させる効果があるからです。
荷物が軽く見えた方が、スタッフの作業効率が高まるんですね。
自分の行動が色彩によって後押しされたり、操られたりする場合があります。
気になるものがあったら、その色にどんな意味があるのか考えてみましょう。
自分で選んで自分らしさ
多様性を尊重し、制服を選ぶことができる高校が県内で増えています。
「男らしさ」「女らしさ」を意識しない「ジェンダーレス」への配慮が理由の一つにあります。
県教育員会の2020年度時点の情報によると、女子生徒がスラックスを選べる県立高校は20年度5校でしたが、21年度は8校に増えました。
22年度は新たに3校が加わり、11校となる見通しです。
砺波高校と高岡南高校は22年度から制服を一新します。
両校とも既に学校への届け出がなくても女子生徒はスラックスを着用できます。
男子のスカートも認められています。
砺波高校では生徒が主導となって新しい制服を決め、自分の好みに応じて夏服の色、リボンかネクタイかなどを自由に選ぶことができます。
O型の人はよく献血する?
大阪大学の行ったアンケート調査によると、O型の人は他の血液型よりも過去1年の献血率が高いそうです。
O型が特別に性格がいいから、というわけではなさそうです。
献血以外に金銭を寄付したり、臓器を提供したりという行動には統計的な差は血液型にはありません。違いがあるのは、O型という血液の性質。
O型は他の血液型にも輸血できるのです(原則的には行われません)。
その知識があるO型の人は、知識がないO型の人よりも献血をする傾向にあるのです。
内閣府の調査によると、ボランティア活動に参加を決めた理由の半数以上は「社会の役に立ちたいから」です。
ちょっとした知識が尊い決断を下支えするということでしょうか。
決断疲れはビッグデータで解消?
決断疲れという言葉があります。決断するには時間もエネルギーも必要です。
人間は重要な決断を1日に何度もできないと言います。
ビッグデータが活用されるようになり、企業は個々人にぴったりのサービスを提供するようになりました。おかげで選ぶ手間を省けます。
例えばNetflix。友達のアカウントではアニメばかり勧められるのに、自分は海外ドラマばかりということがありますよね。
それはリコメンドされるコンテンツが利用者の視聴傾向によってカスタマイズされているからです。
画面中にその人が興味を持ちそうなコンテンツがあふれるので、ついつい見てしまいます。
時間やエネルギーを節約できて便利だけれど、勝手に選択の幅を狭められているような気もします。
※参考文献『NETFLIXコンテンツ帝国の野望―GAFAを超える最強IT企業』(ジーナ・キーティング著、牧野洋訳、新潮社)、『人を動かす「色」の科学 1杯のコーヒーから始まる身近で不思議な世界』(松本英恵著、SBクリエイティブ)、『行動経済学の使い方』(大竹文雄著、岩波書店)、『漢字なりたち図鑑 形から起源・由来を読み解く』(円満字二郎著、誠文堂新光社)、『漢字語源語義辞典』(加納喜光著、東京堂出版)