高校生へのMESSAGES
人気クイズ番組で「ジャスコ」の愛称で親しまれた林輝幸さん。
番組を卒業後もタレント活動の傍ら、クイズを楽しむ垣根を取っ払おうと起業しました。
クイズへの思い、そして受験勉強のこつ、高校生へのメッセージを語ってくれました。
東大卒"クイズ王"林 輝幸さん
去年の春に2年間出演した「東大王」を卒業しました。学びの多い期間でしたね。
最初の1年間はチャレンジャー。何も気負わずに探求してやろうというつもりで、伸び伸びとやりました。
初回の珍回答から「ジャスコ」と命名されたのは幸運でした。空気が和みましたし、キャラが立ちましたから。
正規メンバーになってからは、責任感が強まりました。
僕たちは答えて当然と思われているわけで、不正解が続くと悔しかった。東大王グループで反省会も開いていましたよ。
先輩メンバーの水上楓さんからは「我々はクイズのプロとして番組に出ている。
遊びとしてやっているわけではない」と強く言われました。
僕たちが良い成績を出さないと、番組としても盛り下がるし、見ている人も悲しい。
仕事としてクイズを認識するようになりました。
番組卒業の回は東大王チームの10連勝が懸かっていました。もちろん勝って終わりたかった。
それはかなわなかったけど、ベストは尽くせた。やりきったと思っています。
親のプレッシャーを強行突破
クイズは小さい時から好きでした。
自分でも能動的にやりたいと思うようになったのは、小学校5年生で見た「高校生クイズ」がきっかけです。
すごい難問をどんどんと解いていく姿に「自分もやりたい」と思いました。
高校生になってクイズ研究会を立ち上げましたが、何をしたらいいかも分からない。
ノウハウはないし、東京の学校のように他校との交流もない。
「高校生クイズ」と「エコノミクス甲子園」の予選くらいしかアウトプットの機会はありません。
モチベーションが続かず、部室は自然と自習室になりました。
僕の家族や親戚には理系寄りの仕事をしている人が多く、同じような道を歩んでほしいという人もいたようです。
でも、自分には興味がありませんでした。
顔色をうかがいながら生きるのは自分のためになりません。強行突破するように文系を選びました。
東京の大学を選んだのは、特にやりたいことがなかったから。
進路担当の先生に勧められたんです。東京は政治や経済、文化の中心地。
刺激が多いところにいれば自然と見えてくるものもあるだろうと。
どうせならいいところに行きたいと、東大に目標を定めました。
それが1年生の秋頃かな。それまではどこか遠い存在のように思っていました。
むしろ京都大学に関心がありましたね。京都の街の雰囲気に憧れていましたから。今思えば、フワフワしていますね。
周りには、医者や弁護士になりたいとはっきりとした目標がある同級生もいたんですけどね。
受験勉強は役に立つ
受験勉強って大変ですよね。
僕は家に「東大勉強法」みたいな姉の本があったので、それを読んで勉強のやり方を組み立てました。
模試はだいたいB判定でしたけど、高3の夏に本番と同じ形式の模試を受けたらボーダーとされる点数に届いていなかった。
不安があった社会科系の科目を一気に仕上げました。本番はボーダーを30点くらい上回っていたので頑張った成果が出ました。
僕は現国が苦手。表現力が壊滅的になかった。授業で添削してもらっても、10点中0点か1点という状態。
読書経験がほとんどなかったからでしょうね。なんとか問題集を解きまくって受験に間に合わせた感じです。
遠回りに思う人がいるかもしれませんが、本は読んでおく方がいいですよね。
受験勉強のこつは、目標を定めて戦略を練ることだと思います。
例えば東大文類の2次試験は550点満点です。ボーダーラインとされていているのが、240点です。
その内、英語では80点取ると決めて、リスニングでは30点取って、文法と和英作文では満点を取って……というように自分の得意不得意を見定めながら、攻守のポイントを決めて勉強するといい。
その出発点は自分を知ること。模試でつまずいたところをしっかり見直し、どんな課題があるのか把握しましょう。
受験勉強って役に立たないと思う人がいますよね。
でも、目標のために計画を立てて実行し、問題を把握して修正して解決する経験は大人になっても役に立つものです。
人生はそういう過程の連続ですから。
「頭のいい人の遊び」じゃない
クイズは新しい知識や情報を通して、目の前にある世界が広がることが魅力と言われています。
もちろん僕もそう思います。でも、それだけじゃないと考えるようになりました。
最近思うのは、クイズには人を、人生を肯定する力があるということ。どんなジャンルからでもクイズは生まれます。
学校の勉強が苦手な人でも、自分が好きなアニメや映画のクイズなら答えられたという経験があると思います。
その時はきっとうれしかったはず。これまでの自分があったから正解できたんです。
クイズには生き方や人生を肯定する力があるんです。一瞬だけかもしれないけれど、人を幸せにできるんです。
今はタレントとしての活動を並行しつつ、クイズのイベント事業を行なっています。
クイズ番組の影響で、クイズと学歴が結び付けられ、「クイズができる人は勉強ができる。
クイズは頭のいい人のためのもの」というイメージが広がっている気がします。
でも、そうじゃない。誰でも純粋な娯楽として楽しめるものです。
何でもクイズになるし、誰にでもできるんです。
そこから思わぬコミュニケーションが生まれることだってあります。
これまでクイズに積極的にかかわりがなかった人にも触れてほしい。
僕は高校生時代にクイズをやりたかったけど、やれる環境がなかった。
そういう人を1人でも減らせられたらいいなと思っています。
僕はフワフワと進学を決めたけど、たまたまクイズと出会えました。
それが今の仕事につながっています。幸運だったと思います。
高校生のみんなには早いうちから自分が一生をかけて何をやりたいのか考えてほしい。
どんな仕事が世の中にはあって、どんな魅力があるのか。検索しても、本を読んで調べてもいい。
周りの人に聞いてみるのもいいでしょう。身近なところにヒントがあるかもしれません。
林 輝幸
はやし・てるゆき/1997年生まれ。滑川市出身。
片山学園高校を経て、東京大文学部卒業。2019年から人気テレビ番組「東大王」に出演し、人気を集めた。20年に番組を卒業し、タレントとしての活動の傍ら、クイズを軸とした事業を展開する。
※掲載内容とプロフィール情報はFuture 2022[進学・オシゴト版] 2022.2.25時点のものです。