
富山にこんなお仕事2025
学芸員
アートを見て自分を知る
実家は代々写真館で、休日になるとカメラマンの父がよく美術館に連れて行ってくれた。お絵描きも好きだったが、関心は制作よりも鑑賞に向いていた。「私はこんな線が好きなのか」「面白い色の組み合わせ」。言葉では表現できない作品に触れることは、自分自身を知ることにつながると、いつしか感じるようになった。
静岡文化芸術大学の文化政策学部へ進学したのは「なんとなく」だった。明確な将来のビジョンがあったわけではなく、「趣味の延長」であった。学芸員という存在を詳しく知ったのも大学に入ってから。しかし、思いのほか刺激的だった。アートに興味のある仲間が多く、作品について語り合う中で視野が広がっていく気がした。特に関心を持ったのが、キース・ヘリング。地下鉄や路上から始まるシンプルな線と色彩が社会を動かす力に強く惹かれた。多くの人を巻き込みアートの裾野を広げる姿勢に感銘を受けた。
小川さんが学芸員という仕事を意識したのも、美術を多くの人に広めたいという思いがあったからだ。知識を伝えるだけでなく、社会とアートをつなげる多様な関わり方を提案できる仕事だと考えるようになった。
大学院では美術教育を専攻し、2023年には富山市ガラス美術館の学芸員になった。まだ展示は任されていないが、先輩を手伝いながら必要なことを学んでいる。「現代ガラスはまだまだ変化し続けている。日を追うごとに学ぶべきことが増えている」。最近は館長から英語力を鍛えるようにと言われた。世界のガラス作家や美術館とコミュニケーションをとるには不可欠だ。昔の教科書を引っ張り出したり、AIと英会話できるアプリを使ったり。覚えることは多いが、充実した毎日を送っている。
私の愛用品

■手帳
昨年と今年のスケジュール帳をいつも持ち歩く。昨年の仕事の進行を参考にしながら、今年の予定を組む。スケジュールだけでなく、ふと思いついたアイデアも書き留める。
※掲載内容はFuture 2025[進学・オシゴト版]
(2025.3.12時点のものです。)