
富山にこんなお仕事2025
アートディレクター
長く愛されるデザインを
素朴な色合いと線で描かれた愛らしい寿司が、ポスターやデジタルサイネージに踊る。2023年から富山市が展開する「すしのまち とやま」事業のビジュアルデザインはずっと見ていても飽きない。
このアートディレクションを担ったのが柿本さんだ。富山に移り住んだ時に感じた「透明感のある空気や水、食べ物の味」のイメージを託した。「一過性のものじゃなくて、長く愛されるもの」を意識したという。
高校時代はファッションデザインに憧れながらも、両親の意向で理系進学を志した。しかし結局、思うような結果が出ず、結局一浪した。当初の柿本さんの思いに近く、クリエイティブな色合いが強い富山大芸術文化学部に入学できた。工芸コースだったが、グラフィックデザインの授業が楽しかった。CDのジャケットをデザインした際、画像編集ソフトの作業に夢中になった。イメージしたものが形になっていく瞬間が心地よく「これだ」と思った。
大学卒業後は富山市内のデザイン事務所に就職。5年後の2022年、県水墨美術館の年間デザイナーに選ばれたのを機に独立した。クライアントとの打ち合わせはいつも緊張する。「物として良くしたいのは当然だけど、相手の納得がないと意味がない」と、デザインの質と対話の両立を大切にしている。
手掛けた仕事を見た人から新しい依頼が来る。一つ一つの仕事に全力で取り組めば分かってくれる人がいるのだ。最近はインテリアショップとのコラボ商品や歌集の装丁も担当した。「パッケージや店舗の空間デザインなど立体的な領域にも挑戦していきたい」と意欲を見せる。愛らしく温もりあるデザインは、これからも街に溶け込んでいくだろう。
私の愛用品

■タンブラー
シンプルな白いタンブラーには、朝に淹れたブラックコーヒーがたっぷり。自宅のアトリエでお気に入りのカップに注いで、香りを楽しみながらじっくり仕事する。コーヒーは県内の店のお気に入りの豆を使う。旅行先でも豆を探す。
※掲載内容はFuture 2025[進学・オシゴト版]
(2025.3.12時点のものです。)