
アートで生きる①
ビデオアーティスト
wally/じおらま富山。さん
看護師からビデオアーティストに転身し、富山の風景をミニチュア風に撮影する「じおらま富山。」で注目を集めるWally。
「SNSで世界を狙う」という戦略を練り上げ、フォロワー数は8万人を超える。
海外のアートイベント出展など着実に実績を積み重ねている。SNSを駆使して独自の映像を発表するクリエイターの素顔に迫った。
世界を目指す道筋
今は世界のSNSユーザーから関心を持たれていますが、どんな高校時代でしたか。
バスケ部に所属していましたけど、本気で打ち込んでいたのはバンド活動でしたね。ギターボーカルです。中学2年から始めて、最初はコピーバンドでしたが、すぐに自分で曲を作りたいと思うようになりました。それで音楽理論も独学で勉強しました。大学生の時にはCDも作りました。
勉強家なんですね。
当時は売れている音楽のコード進行を研究したり、どうやったら人の心が動くのかを分析していました。本当に音楽で売れたかったんですよ。自分なりに理論を理解してからは、曲が次々と作れるようになった。今思えば、この時期に身に付いた「攻略法を見つける」という考え方は、今の活動にも直結していますね。どんな映像を人は魅力的に感じるのか。それは、かなり考えて撮影しています。SNSでもYouTubeでも人の心を動かすロジックがあります。何も考えずに作って、発表してもダメです。
その後、大学の経済学部から看護師、そして映像クリエイターへと転身されていますよね。
まず大学の先輩たちが会社に入って転勤を繰り返している姿を見て不安になったんですよ。自分の働く場所すら選べない仕事はどうなのかって。看護師なら自分の技術で職場を選べる。その後、看護師の仕事をしつつ、趣味で動画を作り始めて今に至ります。自分の技術や発想で勝負できる世界を求めていたというのもあります。
動画制作のきっかけは?
コロナ禍で外出できなかった時、YouTubeばかり見ていました。そこで海外の「ビデオグラファー」と呼ばれるちょっとした機材で映画のような映像を撮る人たちの存在を知りました。彼らに憧れて、小型のアクションカメラを買ったのがスタートです。それで遊んでいるうちに、「いける」という直感があったんです。
まず自身のInstag ramのフォロワー数を5千人程度まで増やし、ある程度の数字的な信頼性を作りました。それで最初は美容院に無料で広告用の動画を撮影させてもらって、業界で認知してもらいました。結局「お金を払ってでも作りたい」というお客さんが出てくるようになりました。
そういった動画制作で食べられるようになったんですが、こういうのって修正が多いんですよ。だったらアーティストとして自分の作品を発表して、それで稼げるようになったらって思ったんです。自分なりにSNSを研究すれば、世界が目指せるという筋道もなんとなく見えていた。2024年は「じおらま富山。」の活動を定着させる年とするつもりだったけど、思いのほか企業や行政からの依頼が相次いでいます。
富山という地方を拠点にしています。それは不利になりませんか。
正直、本来僕の現在の撮影方法であれば人がたくさんいるところの方が良い映像になるんですが、そこは技術でなんとか(笑)。今はどこからでも世界に向けて発信できる時代です。パイを広げようと思えば、広げられる。例えば僕の動画に触れて100人に1人がファンになってもらえるとしたら、その母数を増やせばいい。そのためのSNSです。僕のフォロワーの8割は海外です。作り手側の力量や戦略次第でどうにでもなります。
アーティストとして生きていくことを考えている高校生へのメッセージをお願いします。
アーティストとしての活動はレールから外れる危険性や面白さと背中合わせです。正直に言うと、安易にはおすすめできません。僕自身は、完全な戦略がないと一歩目を踏み出せない性格なんです。戦略が見えれば見えるほど、リスクも見えてくる。それを消せるだけのスキームや作戦がないと前に進めない。ただ、その分野で本気で戦略を立てられる人なら、可能性は必ずあると思います。
wally/じおらま富山。
ビデオアーティスト
wally/じおらま富山。1990年生まれ、射水市出身。福井県立大学経済学部卒業後、看護師として勤務。2020年から動画制作を始め、23年11月より「じおらま富山。」を開始。ミニチュア風の映像表現で国内外から注目を集める。フォロワー数は8万人を超える。
※掲載内容とプロフィール情報はFuture 2025[進学・オシゴト版]2025.3.12時点のものです。