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Future2025巻頭インタビュー
けんごさん/小説紹介クリエイター

TikTokで50万人近いフォロワーを持つ小説紹介クリエイターのけんごさん。
野球一筋だった学生時代から、大学で小説に出会い、小説紹介を仕事にするまでの道のりを語ってもらった。

小説が人生を変えてくれた

▽高校時代はずっと野球部だったそうですね。
小学校3年生から野球を始めて、高校でも野球一筋でした。高校は福岡県の私立に推薦で入って、朝から晩まで野球漬けの3年間でしたね。週に1回あるかないかのオフ以外は毎日練習でした。
当時本はほとんど読んでいなかったですね。ただ、赤点を取ると練習に参加できなくなるので、それだけは避けたくて必死に勉強はしていました。スポーツクラスだったので多少テストの難易度は下がるけど成績は意外と良かったんです。

▽大学でも野球を続けていたそうですね。
結構本気で野球をやっていました。4年生の秋まで続けましたね。僕には8歳上の兄がいて、その兄が今でも実業団で野球を続けているんです。大学3年生くらいまでは、自分も実業団に行って、いつか兄と同じグラウンドに立ちたいという夢を持っていました。プロになるというより、兄と野球がしたかったんです。

▽本格的に読書を始めたのは大学からとお聞きしました。最初に手に取った『白夜行』はなぜ選んだのでしょうか。800ページ以上ある大作ですよ。
僕の目的は野球以外の趣味を作ることでした。お金がなかったのでコスパ良く長い時間楽しめるものとして読書を始めたんです。それが人生を変えてくれました。レンガみたいに分厚い本があって、作者が東野圭吾さんでした。「この人なら有名だし、面白いだろう。分厚いし、時間もつぶせる」と思ったんです。
その後、読んだ三浦しをんさんの『風が強く吹いている』という作品も大きな存在です。野球へのモチベーションがかなり下がっていた時期に読んだ一冊です。箱根駅伝を目指す大学生たちの物語なんですが、経験者の陸上部員が2人しかいないような寄せ集めのチームが、無謀とも思える目標に向かって頑張っていく。この本を読んで、「もうちょっと頑張ってみようかな」という気持ちになれました。

▽そうやって小説の世界にのめり込んでいったんですね。多くのメディアの中で、小説の魅力はどこにあると感じていますか。
まず、紙の本は充電切れしません。それに、自分のペースで読めるというのも魅力です。映画は決められた時間通りにみんなが同じものを見ますが、小説は読むスピードも、頭の中で想像する登場人物の声や顔も、場面のイメージも、読者によって千差万別です。そういう懐の深さは小説ならではですよね。
読書が苦手な人は意識的に本に触れる時間を作ればいいと思います。朝10分でも、寝る前でも、短い時間でも構わないので固定の時間を作る。音声で読む「オーディブル」でもいい。

知らない人に届けたい

▽動画制作を始めた経緯を教えてください。
2020年の大学4年生の時のことです。コロナ禍で就職活動も大変で、急にオンライン面接に切り替わったりと、世の中が大きく変わる中で、自分も何か力をつけなければと思いました。
そこでプログラミングと映像制作を学び始めたんです。プログラミングの方は正直、数カ月の独学では限界を感じましたが、映像制作は楽しかった。大学生のアルバイトとしてはかなりいい収入を得られるようになりました。
編集スキルが上がってくると、自分が演者として何かやるのもありかなと考え始めました。それが大学4年生の秋頃です。ちょうど大学野球も引退が近づいていて何か新しいことを始めたいと思っていました。それで11月に引退して、その月末にはもうTikTokでの小説紹介を始めていました。

▽現在の仕事の形になるまでの道のりを教えてください。
実は一般企業からの内定もいくつかいただいていたのですが、納得できるものではなくて。博打だとは思いましたが、映像制作の仕事を続けました。最初は不安もありましたけど、映像を作るのが好きだったし、発信活動も楽しい。夢中でやってきただけです。今は発信活動が大きな収入源になっています。出版社さんや代理店からのプロモーション依頼も多いですし、裏方として関わることもあります。

▽なぜTikTokを選んだのですか。
YouTubeはサムネイルがあって、タイトルがあって、それをクリックしたら動画がスタートするんですよね。小説好きの方はクリックしてくれるかもしれないけれども、それ以外の人がクリックしてくれることは難しい。でも、TikTokはいい動画を作ればどんどん拡散されていく。人々の気を引くような動画を作れば、かつての自分のように本を読まない人にも届くと思ったんです。

▽動画制作で特に意識していることは何でしょうか。
余計な情報を入れないことです。例えば著者さんの名前を、ショート動画では別に入れる必要はないと思っているんです。知らない人に向けて発信している以上、意味の分からない情報が出てきた瞬間に興味がそがれると思うんです。賞の名前も必要ない。それは後々自分で知ったらいいんです。それより物語の魅力をちゃんと伝えることだけにフォーカスしたらいい。1本の動画でも、自分の中で言い回しや言葉のニュアンス、ジェスチャーをかなり意識して作っているんです。カロリーを使う作業なので、1本撮るだけでもぐったりしますね。

▽毎月20冊読むそうですね。好きな読書を仕事にする難しさはありますか。
やはり、読むのがしんどい時はあります。仕事にしてしまった以上、自分が心底気になる本や好きな本ばかりを読めるわけではないんです。依頼をいただいて、これを読んでほしいということもあります。僕は面白かった作品しか紹介しないというのは、依頼を受けた時点でお伝えしているのですが、面白いかどうかを確かめるために読まないといけない。ここでしんどくなりますね。好きなことを仕事にするのは、一見素敵そうですけど、苦しいことだったり我慢しなければならないことは間違いなくあります。

▽なぜ小説を読むべきだと思いますか。
小説は読んだ年代や立場によって、同じ作品でも全く違う印象を受けるものです。例えば、子育て中の親になってから読むのと、高校生で読むのとでは感じ方が大きく変わる。その変化を堪能できるのが小説なんです。だからこそ若いうちに、たくさんの本に触れてほしいんです。難しくて分からなくても、楽しめなかったとしても、読んだという事実は大切な財産になります。いろんな小説に触れておくことは、将来の自分へのギフトになると思います。

▽今後の目標を教えてください。
長尺の動画を強めていきたいと思っています。これからも知らない人に向けて発信することはやめないんですけど、僕の影響でちょっとでも本が好きになってくれた人を、より深く引き込みたい。具体的には、短い動画では発信できなかったような詳しい情報を紹介したい。
出版業界が厳しくなっているというけど、コアな読者は確実に存在している。だからこそ、『こんなに面白い本があるんだよ』と発信していくことが大切になってくるんじゃないかと思います。それが僕にできることなんだと思います。

けんご@小説紹介が高校生に薦める3冊
TikTokでの本の紹介で人気を集めるけんごさんが、高校生に向けて特に読んでほしいと語った3冊。「今の時期に読むからこそ得られるものがある」と語る、その理由とともに紹介します。

ポトスライムの船 津村記久子
工場に貼られた「世界一周旅行」のポスターをきっかけに、主人公が自分の人生を見つめ直します。なぜ働くのか、仕事とは何か。将来の自分が働くことのイメージや、その意味を考えるきっかけになる作品です。

風が強く吹いている 三浦しをん
箱根駅伝を目指す大学生たちの物語。陸上経験者が2人しかいないような大学が、寄せ集めのメンバーで箱根を目指すストーリーです。今しかできないことに挑戦する大切さを教えてくれる作品です。僕も勇気づけられました。

カラフル 森絵都
高校生の時に読んでおけばよかったと最も思う作品。今の活動にも影響を与えています。主人公が他人の人生を生きる中で、「一見普通」に見える人々の葛藤や秘密に触れ、価値観を変えていきます。高校生の時に読めば、絶対に深く響きます。

2025.04.16 スペシャルオシゴト

けんご

小説紹介クリエイター

けんご/1998年生まれ、福岡県出身。2020年11月にTikTokで活動を開始し、SNSを中心に小説の魅力を発信。総フォロワー数は100万人以上に達し、出版界に大きな影響を与えている。近著に『けんごの小説紹介 – 読書の沼に引きずり込む88冊』。

※掲載内容とプロフィール情報はFuture 2025[進学・オシゴト版]2025.3.12時点のものです。

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