スペシャルインタビュー
崎山蒼志さん
Future vol.11に掲載
高校生ながら独特な世界観の歌詞や激しいギターで注目を集める崎山蒼志さん。
高校1年生の頃に演奏する姿がネットで一気に拡散し、著名なミュージシャンからも才能を認められている。
来年高校卒業とメジャーデビューアルバムの発表を控え、新たな一歩を踏み出す。
これまでの音楽活動、これからの展望、そして大人の階段を上る思いを語った。
Q 富山というと、何か印象はありますか。
実はまだ行ったことがないんです。去年、富山大学の学園祭に出演する予定だったんですよ。
でも、台風でキャンセルになってしまったんです。行ったら絶対楽しかったんでしょうけど。
Q コロナの影響って何かありましたか。
今は静岡県浜松市というところに住んでいます。
レコーディングや打ち合わせなどで毎週のように上京していたんですが、そういう活動も全部ストップしました。
もちろんライヴも全部中止になりましたが、その分、自分と向き合うことができました。
自分がこれからどんな音楽をやりたいのか、どういうことを表現したいのかってじっくり考えることができました。
Q 崎山さんは高校3年生。2022年には成人年齢が引き下げられて、18歳から成人になります。大人になったと思うときはどんな瞬間ですか。
僕も18歳になりました。大人にめっちゃ近づいてきたなって思います。
高校を卒業して社会人になる人も多いですし、いろいろなことを知る機会が増えて、子どもの視点ではなくなってきたなあって思います。
あと苦手な食べ物を克服できているのは、大人に近づいたからかもしれません(笑)。
珍しいかもしれないけれど、ずっと牛肉が苦手だったんです。でも最近牛丼もようやく食べられるようになって、成長したなって思います。
あ、パクチーは苦手です。これは克服できなさそう。
逆に変わらないことといえば、音楽が好きなことですね。音楽が好きという気持ちは4歳くらいから変わりません。
Q 高校1年生の時にAbemaTV「日村がゆく」に出演して「五月雨」という曲を披露し、高校生とは思えない歌詞の世界、ギターのテクニックで衝撃を与えました。ネットでも拡散されて、一気に注目されました。
何が起きてるのか分からないという感じで。
放送直後はあまり反響がなかったのですが、1週間くらいでTwitterのフォロワーが一気に増えたんです。
音楽好きな人が紹介してくれて、それまで300人くらいだったのが1000人になって、気づいたら5000人になって。
ありがたいという気持ちもありますが、びっくりの方が大きいですね。
ゲスの極み乙女。の川谷絵音さんやくるりの岸田繁さんのような雲の上のミュージシャンの方々が僕に言及してくれて、イベントにも、たくさんの人が来てくれるようになりました。
こうやってインタビューに慣れたのは最近です。今も夢オチしないといいなあって思っています。
Q もともと音楽を始めたきっかけは家族の影響だそうですね。
そうですね。父は昔、バンドでギターをやっていました。
母はビジュアル系バンドが好きで、母の影響を受けて、BUCK -TICKやthe GazettEといったビジュアル系バンドに憧れていました。
4歳になって、祖母の家に遊びに行ったときに、近くにギター教室があったので通うことになりました。
Q 崎山さんは読書好きなんですよね。
中学の時に中村文則さんにはまりました。ああ、これが文学だって。
それから川端康成や太宰治、大江健三郎とか読むようになりました。
Q 崎山さんの歌詞はとても詩的です。10代の高校生が書いたとは思えないような大人っぽさがあります。
自分では全然そんな風には思っていないです。浮かんだ言葉や情景をそのまま曲にしている感じで。
学校から家に帰ってギターを弾いていたら、強いフレーズと言葉が一緒に出てくることもあります。
「五月雨」は勢いで書きましたが、最近は意識して書くことが多いですね。出てきたものを歌に凝縮している感じです。
Q 「悲しみを含んだ夏の光 束ねてみたら光は消えた」(『夏至』)や「あなたは遠い丘 霞に消えて 定まらぬ時間の抜け殻ばかりが残ってく」(『感丘』)など、はかない情景を歌っていますね。
移ろいゆくものとか、刹那というのは逃れられないテーマだと思っていて、意識的にも、無意識的にも書いてしまいます。
歌うことでとどめておきたいというか。そういう歌詞の源流にはビジュアル系バンドの影響があるのかもしれません。
Q 吉増剛造さんや小笠原鳥類さんといった難解とされる現代詩にも影響を受けているそうですね。
吉増さんは君島大空さんというミュージシャンが「崎山君にお薦めしたい」って教えてくださいました。
吉増さんの言葉は力強くて、速いというか。イメージがグワーと来る感じ。
あと小笠原さんは、すごく感覚的なことをうまく言い当てていらっしゃると思います。
こういう散文詩からも影響を受けて、自分なりに歌詞を書いています。
Q 来年高校を卒業します。上京して、ミュージシャンとして独り立ちするそうですね。
子どもの時代が終わることに不安はありますね。
子どもの気持ちがあったから書けたという曲もあるし、地元の風景を反映させた曲もあります。家の周りの坂道とか公園とか。
そのまんまというよりも、それが心象風景になっているという感じで。
あと10代特有の孤独感とか。そういうものと離れてしまうことは怖いといえば怖いです。
これからもそういう感情を行き来できればいいなって思います。
大人は自分で選択したことを、きちんと1人でできる人だと思います。
僕自身は優しい人になりたいです。たくさんの人に優しくしてもらって今があるから。
あと自分ならではの表現に、モノを作ることに執着していたいとも思います。
灰野敬二さんとか、自分だけの表現を追求している人に憧れますね。
Q 日々曲を作っているそうですね。これまで何曲くらい作ったんですか。
今、450曲くらいあります。でも、忘れちゃった曲も、もう歌うことはない曲もあります。
一時期ほどは書いていません。代わりにどんどん練るようになってきましたね。1曲1曲じっくり考えるようになっています。
Q 来年メジャーデビューアルバム『find fuse in youth』を発表しますね。それに先駆けて、これまで世に出た『五月雨』を「Samidare」としてバンドアレンジして、 11月に配信リリースしました。「再定義」シリーズとして、この後もご自身の代表曲を新しい形にして伝えていくそうですね。
「五月雨」は中学1年生の頃に感じていた閉塞感や、不安、焦燥感を書き殴るように書いた楽曲です。
「再定義」してみて、また新たな曲に生まれ変わったなという印象がありました。より楽曲が外向きに開いた感覚があります。
素晴らしい演奏者の方々とご一緒して、レコーディングできたこともとても貴重な体験でした。嵐の中を駆けてくるような感覚になりました。
この後も「Heaven」と「Undu lation」が先行配信されますが、これも今までとは違った印象になっていると思います。
Q 配信シングルを含め、メジャーアルバム第1作はどんな内容になりそうですか。
色んなアレンジャーの方々の力も借りて、今を含む自分の「youth(青春時代)」を振り返りながら、新たな挑戦もしています。
興味深いアルバムになっていると思います。ある意味カオスかもしれません!(笑)
Q メジャーとインディーズでの違いはありますか。
メジャーではより多くの方々と関わりながら作品づくりをしました。
それが今回感じたメジャーとインディーズの大きな違いです。新鮮でした。
今まで聴いてきてくれた人にも、初めて知っていただいた方にも届くように願っています。
もちろん、自分が今やりたいことを大切にしていくつもりなので、アルバムを楽しみにしていただけたらと思います!
コロナが落ち着いたら、今度こそ富山でもライヴをしたいですね。
崎山蒼志
さきやま・そうし/2002年生まれ、静岡県浜松市在住。4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。
2018年5月9日にAbemaTV「日村がゆく」の高校生フォークソングGPに出演し、SNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。2021年1月27日にアルバム『find fuse in youth』にてメジャーデビュー決定。それに先駆けて、11月1日に「Samidare」、12月1日に「Heaven」、2021年1月1日に「Undulation」を配信リリースする。ある朝、起きたらtwitterのフォロワー数が5,000人以上増えていて、スマホの故障を疑った普通の高校3年生。
※掲載内容とプロフィール情報はFuture vol.11(2020.12.4)時点のものです。