スペシャルインタビュー
武内秀龍さん①
ファッションモデルとして世界を舞台に活躍する武内秀龍さん。
189㎝という長身は日本では不利だったが、海外に転身して活路を見出した。
誰もが知っているブランドのファッションに身を包み、魅力を伝える。
トークセンスを生かしたビジネスも展開。世界への架け橋を夢見ている。
直感と、根拠のない自信
モデルとしてどんなお仕事をされているんですか
最近は主だったところだとGUCCIやBottega Venetaの広告とか。先日はUNIQLOの撮影もしました。
4年間モデルをやって日本のブランドは初めてだったので、海外のラグジュアリー・ブランドとはまた違った感慨がありました。
やっぱり日本に貢献したいですからね。
段々お仕事の幅が広がっているようですね。
おかげさまで最初から大きな仕事をさせていただいています。初めてのランウェイがDIORでしたから。
年数が重なるにつれて、自分のブランディングができてきました。
大きなクライアントからオーディションなしで直接ご指名いただきます。
1次、2次の面接はすっ飛ばして3次からとか。1件あたりのギャラの金額も大きくなってきました。
ロンドンを拠点にしていますが、日本で活動しようとは思わなかったんですか。
僕は日本ではやれないんですよ。身長が189㎝で軽く規格外。皆さん、ZOZOTOWNとかで買い物するでしょう?
そこに表示されている着用写真を見た時に、モデルの身長が自分と全く違ったら参考にならないでしょう?
だから日本に僕の仕事はあんまりなくて、海外に行かざるを得なかったんです。
だから最近ユニクロに起用してもらえたのはうれしかったんですよ。国内ブランドはちょっと無理だろうって思っていたので。
モデルのどんなところが大変ですか。
もう慣れていますけど、仕事があるかどうか前日まで分からないことなんてざらにある。
事務所から「お前、来週あたりに撮影あるかも。ないかもしれないけど」と言われ、前日になって急に「ニューヨークに行って」なんて言われるんです。「もっと早く決めてよ」って思うけど、クライアントにとっても、どのモデルを起用するかは大事なこと。
ギリギリまで会議して決めるんだから仕方ないですね。だから毎日気は張り詰めているし、休まらない。
モデルになろうと思ったのはいつですか。
富山にいた高校生の頃なんてモデルという仕事の存在自体も知らなかった。
実際に考えるようになったのは21歳の頃ですね。
英語力を試したくって、海外のモデルがよく集まるバーに出入りしていたんですよ。
そこでできた友人に「モデルに向いているんじゃないの?顔立ちがアジアっぽいし、海外で求められているよ」って勧められました。
最初は東京で頑張ろうとしたけど、身長がネックになってうまくいかない。で、ロンドンの事務所に入ったって感じです。
「仕事させてください」っていきなり事務所の門を叩きました(笑)。そしたら、DIORの仕事が来た。
スタートダッシュがデカい。今思えば、あれも下積みといえば下積みなんですが。
つまらない質問かもしれないけれど、モデルのやりがいって何ですか。
全然つまんなくないですよ。大切な質問。これはね、人を見返したって感じた時かな。
だって、誰も僕が海外でモデルやれるなんて思っていなかったんですよ。富山時代の同級生も、東京の大学の友人たちも。
僕がDIORのショーに出たら、やっぱりファッション関係の人たちはみんな見ているんですよ。インスタでも出回る。
そうすると、急に手のひら返し。「ふざけんじゃねー」って感じですよね(笑)。
そうやって他人が見られなかった景色を自分が努力して見れるようになったのは達成感ありますね。
でも最近は変わってきたかな。目線が変わった。
前はパリコレに出れたらいいと思っていたけど、一流のモデルからしたらパリコレなんてインターンシップみたいなもの。
やっぱり空港に並ぶ広告や、ファッション誌の最初のページの広告がでかい仕事なんです。
あと、新しいクライアントの仕事と出合うこと。去年のGUCCIやUNIQLOなんてまさにそうで。
アートディレクターの写真のセレクトを意外に感じることはありますか。
ありますよ。基本的には僕が絶対に選ばない写真が使われていますね。こっちの方がかっこいいじゃんって思うものは不思議と選ばれない。
それもそうかなって思うのは、自分と第三者ではかっこいいの基準が違う。
第三者、あるいは業界のプロたちが選ぶ「かっこいい」の方が正しいんでしょうね。
そういう他者に委ねる感覚も大事だと思います。「俺はスーツの方がいいと思うけど、ダウンの方がいいんだ」っていう発見も面白い。
今日の撮影は着物をリメイクしたジャケットですね。なかなか着こなせる人はいないかもしれないけど、かっこいい。
実家が呉服屋なんですけど、着物って今難しい状況にあるでしょう。
だから何かできないかっていう思いもあって。このジャケットは店にあった着物で作ったサンプルですよ。
ここから試行錯誤して色々と展開していけばって思います。僕はこれにチャンスを感じているんですよ。
海外で着ていたら「お前、これどこで買ったんだよ。自分で作ったのか。売ってくれ」って言われる。
武内 秀龍
ファッションモデル
1997年富山市生まれ。富山南高校卒業。武蔵野大学を経て、モデルになるために渡英。2020年春夏のDiorパリコレクションをきっかけにランウェイデビューを果たす。
その後もBurberryやTommy Hilfiger、DUNHILL、GUCCI、Bottega Venetaなど名だたるブランドのモデルを務める。189センチの長身とアジアンな雰囲気を武器に、世界を舞台に活躍している。
※掲載内容とプロフィール情報はFuture 2024[進学・オシゴト版] 2024.3.7時点のものです。