群れるか群れないか 全ては生き残るため
人は集団をつくって生きますが、多くの動物もそうです。群れ方、つまりは集まり方にはそれぞれの生存戦略があります。
能力や生活する場所によって異なります。人間も動物から学べることがたくさんあるかも。
Q.多くの動物は「群れ」で、つまり集まって暮らしています。これはなぜでしょうか。
A.ぎっちり肩を寄せ合うように生きる動物もいれば、緩やかに群れをつくる動物もいます。
一方でハンティングする動物、つまりジャガーやトラのようなネコ科の動物は単独生活者といってもいい。
群れるのはライオンくらいです。それぞれに生存戦略があるのです。
ハンティングされる側の動物は群れでいることが多い。それは群れでいた方が周囲の変化に気づき、敵から逃げやすいからです。
群れなくてもいい動物は、1 匹で獲物を探します。その方が獲物に近づきやすく、餌にありつける。
生息環境にも左右されます。例えばニホンカモシカは単独生活者です。彼らは山や森の中で暮らします。
体が小さく、木の葉を食べれば生きられます。そして茂みの中に身を隠せば、天敵から逃げられます。
同じくウシ科であっても、アメリカバイソンは群れの中で生活します。体が大きく、傾斜を登ることはできません。
そして、その体格を維持するためにも草原で大量の草を食べる必要があります。だから開けた場所で生きないといけません。
天敵のオオカミに狙われやすくなりますが、群れることで時には追い払うこともできます。
これは長い時間をかけて種ごとに獲得した戦略なのです。
生物の考え方は個体と共に種を維持することです。個体が生き残れないと、種は生き残れない。
それぞれの行動には意味があります。そのせめぎ合いの中で生態系ピラミッドが成り立っています。
単独生活者も種を残す必要があり、緩やかに社会を持っています。
Q. 人間は群れることもあれば、1人でいる時間も必要とします。これはなぜでしょうか。
A. 人間は文化を持っています。動物にも文化があるとは言えるんですが、人間の場合にはもっと複雑な文化があります。
生きていく上において、その都度その都度必要なことをやっている。
そのためには1 人でいる時間も必要ということです。そのバランスが個性によって違うのでしょう。
ファミリーパークに来てみてください。いろんな種類の動物がいます。ずっと寝ていたり、食事していたり。
それぞれにとって効率的な生活をしています。きっと自分に似たタイプの動物もいるでしょう。
「僕はキリンっぽい」「私はトラっぽい」と思うかもしれない。
もし社会の中でちょっと自分が無理していると思ったら、自分に似た動物の生存戦略をまねてみるのもいいかもしれない。
例えば集団での仕事が合わなかったらフリーになるのもいい。
1人で生きる力がなければ、みんなと力を合わせたらいい。動物から学ぶことはたくさんあります。
村井 仁志
富山市ファミリーパーク園長
むらい・ひとし:1964年 千葉県生まれ。幼少から高校まで横浜で過ごす。東邦大学理学部 生物学科卒。
1987年4月から公益財団法人富山市ファミリーパーク公社に勤務。日本産動物の展示施設「郷土動物館」の飼育展示や「こども動物園」などで教育普及を担当。ライチョウの保護増殖事業にも従事。2021年4月、園長に就任。2023年5月、公益社団法人日本動物園水族館協会 副会長に就任。趣味は休日に山などに行って、出会った野生動物の写真を撮影する。好きな動物はコウモリ。