スペシャルインタビュー
岡崎体育さん②
Future vol.12に掲載
Q 音楽活動を続けるためにもお金って大切なものなんですけどね。
あらためてお金ってどんな存在ですか。
お金は今の文明がある限り、一番大事なものの一つなんですよ。
愛も大事だけど、お金と比べるものじゃないですよね。
音楽やるにしても、ライブハウス借りるのにも、CD出すのにもお金は必要。
お金がある人生とない人生だったら、ある方がいいに決まっています。
お金のことを言わないのがいいとされている風潮はちょっと気持ち悪い。
悪いことして手に入れたお金でない限り、稼ぐこと自体を悪く言うのはダサいですよね。
みんな自分の仕事に誇りを持ってお金を稼いでるんですから。
Q DTM(デスクトップミュージック)をテーマにした番組に出演していらっしゃいました。
番組で見ていても、10代の音楽の作り方が変わってきているのは、よく分かります。
今はパソコンやスマホで作るのが普通になってきました。
ギターを買ってスタジオで練習するのもお金がかかりますよね。
昔より音楽を作ることにお金がかからず、手を伸ばしやすくなっているのはいいことだと思う。
DTMを突き詰めるのもいいし、それを入口に友達とバンドを始めるのもいい。
いろんなことに挑戦して自分のスタイルを見つけてほしいですね。
Q 音楽に限らず映像も工夫次第ですよね。体育さんの『MUSIC VIDEO』という曲は
「MVあるあるネタ」を取り入れて、You Tubeでの再生回数が4500万回近い大ヒット。
でも、映像の制作費は6万円で半額がレンタカー代だったそうですね。
『MUSIC VIDEO』の時はスタッフもいなくて、友人の「ヤバイTシャツ屋さん」のこやまたくやくん(寿司くん)が手伝ってくれました。
僕が運転している隣で、彼が編集していたりして楽しかったですよ。
自分の手でものづくりしているという感覚がありました。
レコード会社に「ああだこうだ」言われるんじゃなくて、自分たちで動いているのが楽しかった。
お金は大事なんだけれど、なければないなりに楽しいことができるんですよ。
あるにはこしたことはないですよ。でも、そういう制限がある中でアイデアが生まれてくることもあります。
Q 5月末に新コンセプトアルバム『OT WORKS II』を出しました。
2018年から21年までのタイアップ曲やコラボ曲をまとめたものです。とてもバラエティに富んだ内容ですね。
いろいろな方からお声がけ頂いて作った作品を集めたものです。
こういう作品が5周年というタイミングで出せたのは、ありがたいですね。
今後もこういうシリーズを出していけたらいいなと思っています。
Q デビュー5年という短い期間の間でたくさん依頼があるということですね。
僕はアーティストとしての色が強いタイプじゃない。何にでもなれるカメレオンタイプだと思っています。
クールな曲調も、ひょうきんなこともできないこともない。いろいろな人がオファーをしやすいんでしょうね。
幸い、僕らしい仕事を振ってもらっているので、縛りがなくてのびのびできています。
歌詞のアイデアは「考えて、考えて」というより、ふと出てくることが多いです。
それを実際に形にするかどうかなんでしょうね。実現するというガソリンがあるかどうか。
みんなが共感してくれるということは、特別変わったことに気付いたわけではないですよ。
2019年にずっと目標にしていたさいたまスーパーアリーナでワンマンライブをやりました。
このアルバムに入っているのは、ちょうどそれ以前と以後の曲が半々くらい。
聴き比べてみると、以前と以降に変化はないんです。
デビュー当時のまま、相変わらず岡崎体育らしい曲が書けているという自負があります。
ワンマンの後は翌日死んでもいいくらいのつもりでいました。でも、今はもっとやりたい気持ちが強い。
もう新しいアルバムに取り掛かっているし、早く完成させて世の中に広めたい。
将来的にはアルバム30枚出すのが目標です。数字には意味ないです。
自分でやるって言ったことに背くのはダサいので、やり抜こうと思っています。
Q コロナは音楽業界にどんな影響を与えましたか。
興行的には大打撃ですよね。元の日々が戻るのを待つだけです。
これまではアルバムを作って、ライブをやって、夏フェスに出てということを当然のように感じていました。
でも、当たり前が当たり前じゃなくなった。
今までの音楽活動が自分の人生にとって貴重なものだったんだと再認識しています。
Q 今後の音楽活動は。
基本的にやりたいことをやるだけですけど、それでも周りの顔色をうかがいながら、やってきました。
それはそれで誇りを持っています。
この顔色をうかがうスタイルを貫き通してなるべく多くの人にいいなって思ってもらいたいです。
岡崎体育
1989年生まれ、京都府出身の男性ソロアーティスト。2012年より地元のスーパーマーケットで働きながら「盆地テクノ(BASIN TECHNO)」という架空のジャンルを掲げて活動を開始。自主制作アルバムを発表しながら、関西を拠点にライブ活動を展開する。16年3月にメジャー(巻尺)に音源を付けた“メジャーデビューアルバム”「MEASURE」を、5月にSME Recordsから正真正銘のメジャーデビューアルバム「BASIN TECHNO」をリリース。17年3月に「MUSIC VIDEO」のクリエイティブや話題性が評価され、「第20回文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門で新人賞を受賞した。19年1月に3rdアルバム「SAITAMA」をリリース。同作を携え6月に埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演を開催し成功を収めた。21年5月にコンセプトアルバム第2弾「OT WORKS II」を発表した。
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※掲載内容とプロフィール情報はFuture vol.12(2021.7.12)時点のものです。