スペシャルインタビュー
川谷絵音さん①
Future vol.17に掲載
個性豊かなメンバーを集め、「indigo la End」「ゲスの極み乙女」「ジェニーハイ」
「ichikoro」「礼賛」などさまざまなバンドを率いる川谷絵音さん。
1人で何でもできそうなほど音楽的才能に恵まれているのに、別の才能と共に音楽を奏でています。
天才とも称される川谷さんが、1人で音楽を作らず、みんなと「集合」するのはなぜでしょうか。
みんなからのエネルギーに影響を受けないわけがない
indigolaEndの新作アルバム「哀愁演劇」が好調ですね。
2年半ぶりのアルバムです。僕らはほぼ毎年新作を出してきました。
でも、今回は前作からかなり間が空いたので曲を作る時間がたくさんあり、曲もたくさんできちゃいました。
リード曲「名前は片想い」もおかげさまで好評ですけど、アルバム全体として質が高くなったと思います。
川谷さんが作ったバンドの中でもindigolaEndの活動歴が一番長い。
そのキャリアの中でも手応えがあるんですね。
そうですね。打ち込みや弦楽器にほとんど頼らず、バンドだけの音でレコーディングしました。ごまかしが効かない録り方です。
そういうチャレンジができるようになったのも僕らが少しずつ成長してきた証拠なのかなって思います。
川谷さんは作曲もですが、言葉のセンスにも注目が集まります。
新作のタイトル「哀愁演劇」も謎めいた魅力があります。「大衆」と「哀愁」っていう言葉遊びです。
僕らは大衆的な音楽をやっています。つまりポップスですね。
今回のアルバムではポップスをやる、大衆音楽をやっていくという覚悟を示したつもりです。
大衆といえば、大衆演劇ですよね。一つ一つ曲の中で、物語を感じさせてくれる歌詞でドラマを表現しているとも言えます。
僕らの音楽は「哀愁を帯びている」とよく言われますし、そこから「哀愁演劇」という言葉が浮かんできました。
今回の「Future」は「集合」をテーマにしています。
川谷さんは個性的なメンバーを集め、このindigolaEndに加え、ゲスの極み乙女、ジェニーハイなどたくさんのバンドを率いています。
ある音楽評論家が「人生1バンド」だと言っていました。
つまり、1人のミュージシャンが成功させられるバンドは一つだけという意味ですね。
でも、川谷さんはいろんなメンバーを集めて、たくさんのバンドを世に送り出している。これは異例なことです。
一つのバンドだけで新しいことをやり続けられるのは大変だし、スゴいことだと思うんです。
でも、一緒にやるメンバーによって生まれるものは違うんです。新しい才能と出会ったら一緒にやってみたい。
もし新しいことをやりたいんだったら、そういう人たちと一緒にやった方が早いんじゃないかな。
ソロとして活動して、いろいろなメンバーを集める方法もある。
でも、バンドの方が楽しいんですよ。それにソロで活動している人も結局は同じバンドメンバーで固めちゃう。
だったらバンドを組んだ方が早い。バンドだとみんなで演奏や曲に責任が持てるんですよ。
ソロはちょっと違う。これがバンドの醍醐味じゃないですか。1人でライブやっても、打ち上げできないじゃないですか。
コロナ禍においては、ライブやフェスが開催できず、音楽ファンが集まれない状況でした。
コロナ禍を経て観客を集めてライブをやる喜びとは。
僕らは自粛ムードの中でもやった方かもしれません。indigolaEndでは1日2回公演でツアーを回りました。
会場のキャパを半分にしてひっそりとやったんですけど、あの時にしかない感慨もあったと思います。
他のミュージシャンはまだ控えていた時期なので、かなり勇気がいる状況でしたけど。
今はその状況が一変した。日常が戻ってきた。
いやー、エネルギーの質が違いますね。フェスはたくさんの人が集まるじゃないですか。
1人1人から出てくる熱量って周りにも同じような気持ちの人がいると、もっと強くなるんですよ。
コロナ禍を経て最初のライブの時は面食らってしまいましたよ。みんな熱くて。これが普通だったんだって驚きました。
僕ら、みんなからこんなにエネルギーをもらっていたんだって再認識しました。歌も演奏も影響を受けないわけがない。
川谷さんはたくさんのバンドを並行しているけど、どんな頭の構造をしているんですか。
どんなスケジュール管理をしているんですか。
無茶しています。とりあえず思い出したものからやります(笑)。
まあ、日程が決まっていたらできるということなんですよ。どんなに不可能そうなスケジュールを組んでも、結局その日はやって来る。
だったらやるしかない。受験もそうでしょう?とりあえずカレンダーの空いているところを埋めて、その通りにこなせばなんとかなる。
今後もプロジェクトは増えていく?
いやー、さすがに限界値に来ています。でも、結局ノリなんですよね。
増やそうとも思っていないけど、減らそうとも思っていないし。
富山にもぜひ。
行きたいです。富山はゲスの極み乙女でホットフィールドに出ているのかな。
あとワンマンの時には前入りしてお寿司屋さんに行きました。
なんかノリのいい店主が寿司を握ってくれるお店。おいしかったなあ。
川谷絵音
ミュージシャン
かわたに・えのん/長崎県出身。2014 年、indigo la End とゲスの極み乙女の2 バンドでワーナーミュージック・ジャパンより同時メジャーデビュー。さらにジェニーハイ、ichikoro、礼賛を加えた5 バンドで活動し、DADARAY、美的計画をプロデュース。さまざまなアーティストに楽曲提供する。
※掲載内容とプロフィール情報は
Future vol.17(2023.12.4)時点のものです。