無駄づくり発明家/藤原 麻里菜さん②
続けることで形になる
動画がバズったり、海外でも企画展を開いたりという活躍ぶりです。
始めたばかりの頃はすぐに辞めるんだろうと思っていました。気づいたら10年たっていた。
人生とか、将来とか気にしないまま生きているだけなんですけどね。
無駄づくりという軸があることで、それを中心にしてコロコロ前に転がっています。
明日でもやめれるくらいの軽いスタンスだったけど、続けることで意味が生まれてきました。
3日で終わっていたら本当に無駄だった。10年やってきたから形になった。
おかげで今、海外で展示をしたり、立派な賞をもらったりしています。
最初の一歩を踏み出すのが難しい。
何となく始めてしまえばいいんですよ。私はただの暇つぶしのつもりでしたから。
技術がない分、作る方法が限られている。だからこそ、限定された条件の中で何ができるか考えるのが楽しかった。
10年たってプログラミングのコツをつかめた気がします。
あと、3Dプリンターなどのデジタルファブリケーションが一般的になったのも大きい。
物作りが手軽になった。時代と合っていたんでしょうね。
世界をゴキゲンにする
「タイパ」「コスパ」という言葉に象徴されるように、無駄をなくす流れが強まっています。
それを突き詰めた結果、巨大な無駄が生まれませんか。
効率化した先にある余った時間は一体何に使うんでしょう。せっかく生まれた時間は面白く使ってほしい。
資格や受験のために使うのもいいけれど、将来の仕事と全く関係ないものをめちゃくちゃ勉強するとか面白い使い方をしてほしいですね。
その方がみんなゴキゲンになると思う。無駄は役に立たないけれど、ゴキゲンにしてくれる。
お金と無駄も関わりが深いです。藤原さんにとって「無駄づくり」的なお金の使い方は?
体験に使うのはすごく好きです。
私はタクシーで千円ぼったくられても、ニコニコしていられるんですよ。
千円をぼったくられるという経験を、千円でできたって思ってしまう。
最近は「応援」でお金を落とすことが多いですね。
売れてない芸人のオンラインサロンに入ったり、大道芸の人にチップを渡したり。
無駄遣いかはわからないけど。面白いものを作ってくれた人に直接支払うのがいい。
どうすれば無駄に目を向ける余裕をつくれますか。
私も毎日何かに追われています。生きていると何かしらやらないといけない。
だから1日5分でもルーティンを作るのが大切。私の場合は帰ったら絶対に踊ります。
音楽を流して人には見せられないようなダンスをするんです。
音楽に乗っているだけなんですけど、それをやると今日も1日頑張ったなっていう一区切りができる。
そういう余白をルーティンにするといいのでは。
改めて無駄とは。
未来の価値です。
無駄として排除されるものでも、キラキラ輝いていると思って大切にすると最終的に価値になるんですよ。
私は石が好き。宝石ではなくて、その辺に落ちている石です。
最近海に行ったときに手のひらサイズの石を見つけたんです。
触り心地が良くて、スマホのように手にフィットする。それをスマホのように触っていたら、どうでもいいSNSを見なくなった。
今、強盗にこの石を取られて、5千円で返すと言われたら、私は5千円払います。
つまり0円で拾った石が5千円の価値になっているんですよ。無意味なものでも愛情を注げば価値が生まれるんです。
藤原麻里菜
無駄づくり発明家
ふじわら・まりな/1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。2018年、国外での初個展「無用發明展‐無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25000人以上の来場者を記録した。「総務省異能vation破壊的な挑戦者部門2019年度」採択。ForbesJapan「世界を変える30歳未満の30人」2021年入選。
※掲載内容とプロフィール情報は
Future vol.16(2023.7.10)時点のものです。