スペシャルインタビュー
休日課長さん①
Future vol.15に掲載
ジャンルを超越した多彩な楽曲で人気を博するバンド「ゲスの極み乙女」が結成10周年を迎えました。
ベーシストの休日課長さんは、高校時代の切ない体験からベースを始め、
仲間と出会い、心躍らせる音楽を生み出してきました。
忙しい日々を送る休日課長さんですが、どんな休日を過ごしていますか。
休日課長は富山には?
ツアーでも行きましたし、黒部のホットフィールドにも出演しました。
お寿司を食べておいしかったのもいい思い出です。シロエビがしっかり記憶に残っていますね。
その時はライブ前日でベースプレーのため、お酒を飲まなかったので、
いつか富山グルメとお酒を楽しむ1人旅なんかもしたいなぁって思っています。
普段はどんな休日を過ごしているんですか。
こんな名前ですが、休日はあるようなないような。
時間があったらベースをさわっていますね。曲のベースアレンジ考えたり、練習したり。
丸一日休日という日はあまりないですが、息抜きにドラマや食関係のドキュメンタリーを見たりしてます。
Netflixの「シェフのテーブル」は毎話一人の料理人にフォーカスしたドキュメンタリーなんですが、
とても刺激的で何度も見ています。
休日課長という名前の由来は?
ライブハウスの店長に「課長っぽい顔をしているよね」って言われたんですよ(笑)。
それから課長と呼ばれるようになりました。
で、大学院を出て就職してから「ゲスの極み乙女」のメンバーになったのですが、
その時にボーカルの川谷絵音が「課長は働いているから休日しか参加できないし」って、
アルバムのクレジットに「休日課長」という名前を決めて入れたんです。
そこから、休日課長になりました。今思えばよかったですね。覚えやすいし、平和な感じがするし。
音楽活動をいくつも並行しているけれど、その中での時間の作り方は?
時間の使い方は下手かもしれないですね。
カレンダーやTODOリストのアプリはフル活用してタスク管理しています。
こういうテクノロジーがないと成り立たない。記憶力が著しく悪いので。
仕事をためるのが怖くて、やった仕事がスマホから消えていくのが達成感あります。
どんな休日だったらいいと思いますか。
どんなことでも自分のためにつなげたいという強迫観念があります。
ご飯を食べにいくにも、これまで食べたことないものを食べたくなります。
人生のスパイスを求めちゃうんですね。
自分の仕事や生き方に刺激を与えてくれる人には料理人が多いです。
あとレコードが好きなので、バーでレコードの音を聴いているときが一番リラックスします。
休日にバンドをやっていたのが、今は平日にバンドをやる生活です。
年中が夏休みで、ずっと部活動やってみるみたいな感じ。
部活はつらいこともたくさんあるし。楽しいこともあるし。
会社時代とは出会う人の業界が少し変わったかなあというくらいです。
音楽に触れたのは?
小学生の時にピアノをやっていたんですが、地域で一番優しいと評判だった先生を怒らせてしまうほど、
向いていませんでした。練習を全くしなかったんです。
そもそも習い始めたのも、父親が持っていた電子ピアノに触りたいといっただけなのに、
親に「ピアノを弾けるようになりたい」と拡大解釈されてしまったんですよね。
当時はノーと言えない子で(笑)、ずるずると続けてしまいました。
でも、あのままピアノが上手になっていたら、ベースを弾いていなかったでしょうね。
ベースを始めたのは?
中学生の時に好きだった女の子を誘って、ジョンレノン・ミュージアムに行こうとしたんですよ。
でも、あっけなく断られてしまいました(笑)。仕方なく、父と一緒に行ったんです。
そしたら、ビートルズのライブ映像が流れていて、女の子が失神している様子が映っていました。
「これだな」と思って、親戚のおじさんからギターをもらいました。
ギターからベースに転向した理由もやっぱり女の子で(笑)。
大学にめでたく合格した瞬間に当時付き合っていた女性に振られたんですよ。
きっと前から気持ちはなくなっていたんでしょうけど、向こうは気を使って受験が終わるまで待っていてくれたんですね。
大学に受かった喜びと、振られたという悲しみが一気に押し寄せてきました。
父から合格祝いに2万円をもらっていたので、ウッドストックというフェスのDVDを買ったんですね。
それに出ていたジミ・ヘンドリックスというギタリストのライブ映像を見て
「自分はこんなに上手に弾けない」と打ちひしがれてしまいました。
その後に、レッド・ホット・チリペッパーズというバンドのライブDVDを見て、フリーというベーシストのプレーに衝撃を受けました。
そこからベースに転向することにしました。ベースは向いていたと思います。
どんなタイミングで指先でどう弾くかということだけで音が結構変わっちゃうんです。
そこを追求するのが面白かったですね。
中学高校では洋楽ばっかり聴いていましたね。当時はアンチ邦楽で、J-POPはカッコ悪いものと思っていました。
もちろん今では全くそんなことは思いませんけど。
その辺の偏見がほぐれていったのは、大学に入ってからですね。
軽音部に入って、先輩たちが東京事変やtoeといった日本のカッコいいバンドを教えてくれました。
こうやってJ-POPのベースをやっているのも、いろいろな偶然が重なった結果です。
楽器をやってる高校生も多いと思いますけど、練習のコツはありますか。
今の若い人ってめちゃくちゃ楽器うまいですよね。僕が教えるまでもないと思いますが。
それでもあえて言うなら、他の人と合わせてみることですね。
誰かと演奏すると得るものは大きいですよ。
あとは「これをやったらうまくなるんじゃないか」と思いついたことはどんどんやってみる、というのがお勧めですね。
休日課長
ベーシスト
きゅうじつかちょう/1987年2月20日生まれ、埼玉県出身。
「ゲスの極み乙女」「DADARAY」「ichikoro」「礼賛」4つのバンドを中心に活動している。”食”関係の活動も行なっており、2020年に著書「ホメられるとまた作りたくなる!妄想ごはん」(マガジンハウス)を出版、21年に同書が原案本としてドラマ化された。
eninaranaiotokoInstagram@kyujitsu_kacho
※掲載内容とプロフィール情報は
Future vol.15(2022.12.5)時点のものです。